メキシコ産牛肉ビジネスが、 シェア拡大へ向けて動き出す。
いま日本で注目されるメキシコ産牛肉。
国内に輸入が開始された背景とは?
いま、 “おいしさレベル”と“食の安全”の観点から、日本国内においてメキシコ産の牛肉が外食・流通関係者の間で注目を集めています。メキシカンビーフ輸出協会CEOは2016年3月11日、「16年対日輸出は5%増目ざす」ことを発表しました。と言っても、一般的なスーパーや小売店で「メキシコ産牛肉」の表示を目にすることは少ないでしょう。日本国内における国別牛肉輸入割合において、メキシコ産牛肉は、まだ2.0%に過ぎません。
資料:「Global Trade Atlas 2014」
日本における輸入牛肉はオーストラリア産、アメリカ産のものがメジャーで、ファミリーレストランや居酒屋などで使われ、日本の外食産業に流通してきました。ところが2003年にアメリカでBSE(牛海綿状脳症)の感染牛が発見されて以来、アメリカ産の牛肉輸入は一時ストップ。その間の代替品としてメキシコ産の牛肉が輸入されるようになり、以来、日本の外食産業を支える一翼を担うようになりました。そしてBSE発症から10年が経過した2013年、アメリカ産牛肉の輸入制限が撤廃され輸入牛肉の王者・アメリカ産が復活。ここにメキシコ産牛肉の撤退か、といった心配が危ぶまれたものの、冒頭の“おいしさレベル”そして“食の安全”の観点から、メキシコ産の牛肉はそのまま国内に輸入され続けるようになりました。
赤身系の旨み、メキシコ産牛肉の評価点。
メキシコ産牛肉が高評価を得た理由として挙げられているその味わい。ある業界関係者によれば、「ブラインドテストをするとメキシコ産がおいしい」という声が上がる、という評価もあるようです。これに関連するメキシコ産牛肉の特徴として、他国産のものと比べて脂身の割合が少ない(部位や等級にもよる)という点があります。メキシコ産の牛肉は赤身系なのです。これはメキシコの気候に由来し、気温が高く熱いために皮膚表面に脂がつく一方で肉中のサシが入りにくくなる、との見解がメキシコ産牛肉関係者にはあるようです。この、脂肪割合が少ないというメリットは病院食や介護食にも向いており、健康志向をめざす外食産業からの需要拡大が期待されそうです。
厳しい衛生リスクへの管理が、
“食の安全”を追究する日本の市場ニーズとマッチ。
メキシコ産牛肉が日本において高評価を得るもうひとつの側面として、“食の安全”という観点があります。他国で次々に発症したBSEが、メキシコ産牛肉では発症していません。メキシコではSAGARPA(メキシコ農畜水産農村開発食料省)が食品の衛生リスクに対して厳しく管理している体制があります。牛肉産業においてはSAGARPAにより検査・検疫を受け認定された食肉処理・加工施設「TIF施設」があり、この展開はメキシコ国内の6割まで拡大しています。また、食肉・内臓処理に対する細やかな技術があることも、“食の安全”を大切にする日本の市場ニーズにマッチしている要因のひとつと言えます。
輸入ビジネスを手掛けるセペダ氏に聞く、
日本におけるメキシコ産牛肉拡大への意向。
株式会社メキプロ 代表取締役社長:ロドルフォ・セペダ氏 インタビュー
日本人にはあまり知られていないけど、焼き肉屋に行ったらメキシコ産牛肉って結構あるんですよ。特にホルモン系は、かなりメキシコ産牛肉が多い。「マルチョウ」というカットがあるんですけど、あれはメキシコで生まれたカットなんだよね。※マルチョウとは牛の小腸の部位を指す。この小腸を裂かないで筒状のままカットし、丸い形にしたメニューとして提供されるものも「マルチョウ」と呼ばれている。小腸は腸の入り口を部分であり、同じ腸の大腸と比べて薄く、脂がのっているのが特徴的。
メキシコ産牛肉のホルモンが人気なのは、「モノがいい」から。BSEも発症したことがない国だし、衛生的にかなり厳しく管理しているよね。食材イベントの出展PRの際には育成状況から加工管理のプロセスを映像として流してPRしています。
日本におけるメキシコ産牛肉の認知度が低いのは、ブランディング戦略がこれまでなされていないということに要因がある。メキシコ産牛肉輸出業協会も設立された背景もありますし、「モノがいい」という評価を武器に、戦略的に日本におけるメキシコ産牛肉のシェアを拡大していきたいですね。