CISNEROS教授レッスン1。メキシコの「死者の日」
まず、このテーマを良く説明するために、少し必要で基本的な歴史から始めましょう。
メキシコという国は不自然な国だと言われています。なぜなら、現在のメキシコは500年前ぐらいに作られたヌエバ・エスパーニャ副王領という地域の上に作られた共和国です。すべての地方では、その前に、多くの小さな文明がありました。それらの文明はさまざまな小さい国のような地域でした。現在のメキシコが元々それらの小さな国の集合体であるからこそ、メキシコは不自然な国だと言われるようになったのです。メキシコの3分の2の面積を占める南の地方は考古学者や人類学者から「メソアメリカ」と呼ばれています。このメソアメリカの中で非常に立派な文明が発展しました。オルメカ文明(紀元前1500〜紀元前500)、マヤ文明(紀元前2000〜現在まで)、サポテカ文明(紀元前700〜現在まで)、タラスカ文明(紀元13世紀〜現在まで)アステカ文明(
紀元 1300〜現在まで)などの文明はまったく違う文化や言葉を持っていましたが宗教はほとんど同じでした。この宗教は名前を持たなかったため、宗教学者達から「メソアメリカ宗教」と呼ばれています。メキシコの有名な「死者の日」はその宗教の1部分です。
次に、ユネスコから「無形文化遺産」に指定された死者の日を簡単に説明しましょう。
3500年前ぐらいからメソアメリカでは多くの死者の祭りが行われました。現在の死者の日はそれらの祭りから発展しました。但し、500年前にキリスト教とミックスしましたが、元々の意味はまだしっかり残っています。死者の日の一番重要な意味は祭り中に、もう亡くなってしまった先祖や親族ともう一度一緒に時間を過ごし、食事を出来ることです。現在の死者の日は11月の1日〜2日までです。なお、伝統的なやり方は1日に亡くなった人々の大好きな食べ物と飲み物を作り、夜になると墓地に行って、その人のお墓の前に持っていった物をすべて供えて備えて、次の日まで彼等と楽しむことです。2日の朝になると、生きている人々は持っていった来た食事を食べ、飲み物を飲みます。なぜなら、死者は食べ物の匂いや熱さしか食べられないからです。しかし、現在のメキシコでは、墓地へは行かず、自宅で祭壇のような台の上に亡くなった人々の写真をおいて、そのまわりに食べ物や飲み物を置いて済ませる方が大勢いるようです。
さらに、この祭りはおそらく日本のお盆と少し似ていると思うので、日本人にとってメキシコの死者の日を体験することは興味深いかもしれません。観光客向けの最高の所はミチョアカン州のパツクアロという村だと言われています。死者の日を見に行くのはいかがでしょうか。
マヌエル シスネロス カストロ(Manuel Cisneros Castro)
* モレリア市出身、メキシコシティに育つ。
* メキシコ自治国立大学文学部(ドイツ語・ドイツ文学)卒業。
* メキシコ大学院大学アジア・アフリカ研究科(日本学)修士課程終了。
* 2017年から立命館大学にスペイン語嘱託講師として勤めている。