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ART
2025/10/16

ヒメネスファミリー、文化の継承と未来へのチャレンジ

PHOTO: KURANO KAYOKO

オアハカの市内から車で山道を上ること約30分、坂だらけの、カラフルな壁画や屋根に彩られたここサン・アントニオ • アラソラは、幻想的な木彫りの動物 ”アレブリヘ” で知られる小さな村です。サポテカ族の遺跡モンテ・アルバンともほど近く、映画リメンバー・ミー等の影響で近年は訪れる旅行者も増えてきています。

ヒメネスファミリーの工房に着くと鮮やかなブーゲンビリアと青空にはためくパペルピカド、そしてアンヘリコ氏が描かれた美しい壁画が迎えてくれました。

PHOTO: ROQUE JIMENEZ

今回は、祖父ドン•マヌエル氏と去年惜しまれつつこの世を去った父アンヘリコ氏の意志を継ぐロケ•ヒメネス氏に、アレブリを始めオアハカに根付いた文化とその未来についてのお話を伺いました。

田中 : 何度か日本でのメキシコPRイベントに参加してくれているロケですが、日本語が全くわからないのに常にお客様との交流を大切にしてますよね、すごいと思います。

Roque Jiménez (以下ロケ) : はい、日本でのイベントで特に喜びを感じるのがワークショップを通じての皆さんとの交流です。作品を通して、言葉の壁を感じず気持ちを分かち合える最高の機会です。日本の皆さんはワークショップでも私の手元をよく観察したりと熱心ですよね。ペットの写真をモデルにしたり、お子さんの体験学習だったり、楽しむことに前向きに見えます。

 田中 : アレブリヘや木彫り人形の産業、現在とお祖父さんやお父さんの頃とでは違いはありますか?

ロケ : はい、ありますね。祖父マヌエルはオアハカに於いてこの産業の創始者です。父アンヘリコは更に木彫りの技術やディテールに重きを置いて、そのおかげで私たちの工房は世界的に注目され認められるようになりました。

私は祖父と父の功績を大切にしながら、皆さんに工房を訪ねてもらったり、ワークショップを開催したり、作品を海外に展示したりしながら、このアートをどう世界に伝えられるか考えています。

                                     

PHOTO: ROQUE JIMENEZ

ルーツや私たちの文化との結びつきといった本質の部分は変わらないと思います。でも今の私たちは旅行やSNS、人との繋がりのお陰でこのアートを更に広めて行ける可能性を持っていると思います。

田中 : アートに関して、先代達から何を受け継ぎましたか?

ロケ : 何より私たちの文化への愛と、職人の鍛錬ですね。祖父からは、木から不思議な生き物を創り出す視点、父からは忍耐と仕事への敬意、作品の質向上への揺るがぬ探求、そして一つ一つに我々のアイデンティティが顕れるべきだという考えを受け継ぎました。また伝統的な技術も受け継ぎました、彫りから彩色まで、私たちの全ての作業の基本です。

 そして責任を引き受けました。この伝統が無くならないよう、新しい世代にもインスピレーションを与えるよう、守り続けて行くと。

PHOTO: ROQUE JIMENEZ

 田中 : 作品制作で将来的にやってみたい新しい事はありますか?

ロケ : はい、新しいコンテンツや他ジャンルとのコラボレーションには興味があります。例えば、同じく動物たちから発想を得た織物や陶器とのコラボとか、他の国のアーティストたちとのコラボは是非実現したいですね。それから、皆さんが単に旅の土産としてナワル(木彫りの精霊)に色付けをするだけでなく、私たちの伝統との繋がりを感じられるようにワークショップを体験できる工房を増やしたいです。

田中 : 伝統的産業に於いて、保存とイノベーションの良いバランスは取れていると思います?

ロケ : そう思いますよ、必ずしも簡単ではないけど。私たちにとって伝統的な技術や精神を守ることは非常に重要なんですが、同時に新しい世代にも合わせて行くべきなんです。イノベーションとは伝統を壊すということではなく、新しい表現の仕方を提案するということなんです。重要なのは作品の起源と正統性への敬意を持ち続けることだと思います。

田中 : オアハカの木彫り動物やアレブリヘを知ってる人がほとんどいない町や国で展示イベントをやるなら、何を伝えたいですか?

ロケ : 一つ一つの人形が単なる置物ではなく、私たちの歴史、文化、そして魂のひとかけらなんだと伝えたいです。それぞれの動物の背景にそれぞれの象徴、手作業の工程、ファミリーの伝統があることをお見せしたいですね。

こういう工芸品に出会うのが初めてだとしても、その一つ一つにオアハカやメキシコの息吹、楽しさを感じてもらえたら嬉しいです。

日本のイベントでは皆さんメキシコならではの色使いやテクニックに驚き、興味を持って色々質問してくれるので、逆に私にとっても良い表現の場になっています。お会いできるのが楽しみです!

田中 : ありがとうございました。また日本でお会いしましょう!


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