革命後の激動の時代壁に歴史を描いた偉大な画家
2017年10月21日(土)~12月10日(日)埼玉県立近代美術館で「ディエゴ・リベラの時代」が開催された。この展覧会は、メキシコのA SECRETARIA DE CULTURA(メキシコ文化省)、INSTITUTO NACIONAL DE BELLAS ARTES Y LITERATURA(INBA/メキシコ国立芸術院)の大きな協力の元開催された。展覧会の導入部分でそのことが紹介されており、メキシコ側も大きな熱意をもってこの展覧会をサポートしたことが伺われた。
ディエゴ・リベラはグアナフアト州出身。国の紙幣にもなっている程の国民画家で、日本では、数年前に展覧会が行われ一世を風靡したフリーダ・カーロの夫として、そして社会の教科書にも載っていた「アラメダ公園の日曜の午後の夢」を描いた画家ということで知られている。
しかし、今回の展覧会を観て、私が認識していた彼はほんの小さな一部分でもっともっと大きな人物であるということが理解できた。彼と関わったアーティストたちの素晴らしい面々、そしてその人物たちとの関わり方も含めて、なんとドラマチックな人生だったのだろうと窺い知れる。
メキシコ革命後文部大臣に就任したホセ・バスコンセロスは非識字者の多い国民への教育的目的から、公共の場にある壁に自国の風俗や歴史、革命により新しく生まれ変わったメキシコのテーマを表す絵を描く「壁画運動」を行った。その壁画運動で中心的に活動した3人の画家がシケイロス、オロスコ、そしてディエゴ・リベラである。ちなみに筆者はグアダラハラでオロスコの壁画「立ち上がるイダルゴ神父」を観たことがあるが、ものすごい迫力に息が詰まるほどに圧倒された。その時の感覚は、10数年たった今でも鮮明に残っている。ディエゴ・リベラが最初に描いた壁画は、メキシコシティの国立第一高等学校講堂であったが、この壁画も素晴らしいものであった。当時フリーダ・カーロがこの学校に通っていたというエピソードもあり、ロマンチックこの上ない。
リベラが影響を受けた人物の一人、ホセ・グアダルーペ・ポサダの作品もあった。彼はいわば風刺画家で当時の富裕層や政治家をすべて骸骨にして風刺した記事などを作った人物だ。彼の描いた骸骨の貴婦人は現代もDia de Muertos(死者の日)のキャラクターとして親しまれている。彼の様々な風刺記事のエピソードを文字では見ていたが、実際に本物を見るのは初めてだったので、これには感動した。「あっ、ほんとに全部骸骨なんだ・・・」と。目にして本当にこの企画というか、メッセージは大胆なものだと感じた。現代こんな奇抜なことができるメディアはどこにもいないであろう。ちなみにディエゴ・リベラはポサダから人物の描き方の影響を受けたようだ。
日本人の中にもディエゴ・リベラと交流した人物がいる。レオナール・フジタ、北川民次、日系アメリカ人イサム・ノグチである。特に北川民次は近しく、ディエゴ・リベラの死を悼んで日本の雑誌に追悼記事を書いたりもしている。また、ディエゴ・リベラはヨーロッパ留学時代、葛飾北斎に興味があったと窺える絵もあった。
ディエゴ・リベラと関わったアーティストたちのことをもっと書きたいが、それぞれがすご過ぎる人ばかりで書ききれないので、それはまたの機会としたい。
ぜひ、次回メキシコに行った際はディエゴ・リベラ壁画館を訪れてみようと心に決めた次第である。