オアハカ、様々な伝統工芸との出会い。そしてモレロス村の人たちとの不思議な時間共有。
メキシコ南部オアハカ州の先住民族の割合は約40%と高く、その要因には、険しい山岳地帯が集落同士の孤立を生み、近代化においても交通網の整備がなかなか進まなかったため、外からの同化政策や文化的影響を受けにくかった。サポテカやミシュテカなどの多様な先住民族による高度な文明は、表情豊かな伝統工芸を継承し、現代まで守られてきた。

州都オアハカのソカロ広場の近くにあるテキスタイルミュージアムは、織物・刺繍、ウィピル(貫頭衣)の空間を贅沢に使った展示にその背景がうかがえる。サント・ドミンゴ・ソリアーノ修道院(のちのサン・パブロ修道院)の跡地にあり、建物の美しさも際立つ。コロニアル様式で、緑のカンテラ石の外観と中庭の赤土のテラコッタやレンガの壁面、モダンな内装のコントラストが見事な空間を演出している。フェアトレードの製品を扱うミュージアムショップは、上質でハイセンスなものに出会える。


ソカロ広場から車で南へ30分ほどのサン・バルトロ・コヨテペックは、町全体が黒陶器工房集落といえるほど、約9割もの住民が制作や販売に携わっている。訪ねたのは、MUBAR+”Fabians” Barro Negro ファビアン氏とアマリア・シモン氏の家族が運営する工房で金属のような光沢を持つ黒陶器(Barro Negro)に独特の装飾(Mubar)を施した作品で知られている。

さらに車で15分ほど南下すると伝統技法「腰織り- テラール・デ・シントゥーラ」で有名なサポテカ族の小さな村サント・トマス・ハリエサがある。糸を木や柱に固定して、その端糸を自分の腰に巻きつけて張りを調整しながら座った姿勢で織り上げていく、代々受け継がれてきた伝統手織り。サポテカ文明の雷文・幾何学模様、花、鳥などの伝統的モチーフが織り込まれている。素材は、綿、ウール、現在では手軽なアクリル糸も使われている。

サント・トマス・ハリエサ村から車で北東に10分ほど行くと、木彫り工芸品アレブリヘで有名なサン・マルティン・ティルカヘテ村がある。コパルと呼ばれる地元の木から空想動物などを彫り上げた土台に、鮮やかな色彩で模様を描く伝統工芸です。色数は少ないが、大胆な配色でユニークなものから、極細の筆で精緻な模様を施した高級品まで多種多様。作業工程を追いながら道具なども見ていると、あっというまに時間は過ぎてゆき一村一品が守り続けられる営みを感じる。



その日は金曜日で、市内に戻る前にティアンギス(大規模な露天市場)に立ち寄ることになり、オコトランデ・モレロスに向かった。



オアハカは、曜日別に月曜を除いて近郊の村々でティアンギスが開かれる。モレロス市場のすぐ北側に隣接してたくさんの木々に囲まれた伝統的な円形のキオスクがあり、市場歩きで疲れた買い物客たちの休憩所になっている。モレロスの市場は、観光地化されていないローカルな賑わいがある。刃物の街としても有名で、キッチン用の金物も多く並ぶ。水色のホーロー製品が可愛らしく、小ぶりのフライパンと大きなおさじを買って、日陰で休もうとキオスクに立ち入った。
村人たちの憩いの場にひとり迷い込んだような気まずさがあったが、どうにも足が限界で端の方の床に座らせてもらった。女性たちのお喋りの声も心地よく和んでいると、ベンチに座っている長老たちと目が合った。ややあって、手招きされた。驚いた!どう対処したらいいか迷っていると、すっと一人の長老が立って席を空けた。長老たちと女性たちのにこやかな表情に一礼して、ベンチに座らせてもらった。言葉もわからず、ただ座っていた。いくらかの緊張とやわらぎ、時間が止まったような感覚に、モレロス村の人たちに、迎え入れてもらえたような感情が湧き胸がつまった。
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水色の可愛いフライパンと大きなおさじを使うたびに、あの光景が浮かんでくる。オアハカの伝統工芸を通して、先住民族の人たちに受け継ぎ、守ってきた想いに触れさせてもらえたような気がした。

*PHOTO by 美子












